相続税を納めなかったらどうなるの?税務調査とは?

2023相続税の税務調査はどういった場合に行われるのでしょうか?
相続は被相続人が亡くなった後に開始されます。被相続人が亡くなると、遺族の方から各市町村に死亡届が提出され、市町村から税務署へ相続開始の報告がされます。

1.何をすれば相続税の税務調査が来るのか

被相続人の資産などの情報は、税務署に伝わり、不動産や預貯金額が多く、相続税が発生しそうな場合は、税務署に注目されます。金額も大きいため、対象になる場合、しっかりと事前に調べられるのです。

さらに、平成27年の改正により、6~7%の人が相続税に関与してくる事になってきました。基礎控除が【3,000万円+600万円×法定相続人の数】になり、裕福といえる生活をしていなくても、土地を持っているようでしたら、相続税の対象になることが考えられます。

(1)相続税は税務調査が入りやすい

相続税は、税務調査が入りやすいと言われています。税務調査が入るケースは、相続税以外に、所得税や法人税などがありますが、それらと比べても、相続税の税務調査の割合の高さは圧倒的です。

理由は簡単で、税金の額が高額になりやすいということと、誰にでも発生しうる税金であるが故、申告漏れが起きやすいということがあげられます。
確定申告などと違い、一度きりしかない相続税の申告には、税務署も目を光らせているのです。

(2)税務調査=悪い事ではない

とはいえ、一概に「税務調査=悪い事」ということではありません。それ自体が罰則というわけではなく、あくまでも調査にすぎません。
被相続人の遺産についてきちんと質問に答えられれば罰則を科されることもないわけですから、調査が入ること自体は特に恐れるようなことでも無いのです。

税務調査も「脱税している恐れがあるから、調査だ!」というような、家宅捜索のようなものではなく、「この金額の部分はどうなっていますか?」というような訪問・質問形式で行われることが多くあまり強く身構える必要はありません。

2.相続税での違法行為と罰則

しかしながら、世の中には悪いことや、法の抜け目をくぐるような人も出てきます。行き過ぎた行為は脱税として、罰則を受けることもあります。
また「ついうっかり」でもペナルティーを受けることもあります。この場合、通常課される相続税に加え、遅延損害金のような課税が発生します。

(1)相続税法違反

相続税を偽って不正に申告し、正規の金額を納めない行為は、相続税法に違反します。罰則は、10年以下の懲役又は、1,000万円以下の罰金あるいは、これらの併科と、非常に重い罪です。
虚偽の申告や、不正に遺産を隠していた場合は、相続税法違反で告訴される可能性もあります。

(2)重加算税

また、本来納めるべき相続税を納めていなかったということで、さらに重加算税が徴収されることがあります。未納だった相続税額の35~40%が徴収される非常に重いものとなっています。

納税義務があるのに相続税を支払わなかったら、どうなるのでしょうか。
もちろん罰則が待っています。具体的には、「延滞税」「無申告加算税」「重加算税」などの税金が更に課税されます。

期限に遅れて申告を行うことを「期限後申告」といい、期限後申告を行うと延滞税や加算税が発生します。
また相続税を過少に申告していた場合、意図的に財産を隠したり、証拠隠蔽を行えば重加算税が課税されます。

相続税法違反=不正行為により相続税や贈与税を免れた者は、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(併科あり)という場合もありますが、高額の脱税(億単位)や逃亡の可能性などがない限りは以下の追徴課税が一般的になります。

無申告加算税:正当な理由がなく、申告期限に申告しなかった際に課される税金
過少申告加算税:申告期限内に提出した申告書の金額が不足していた場合に課される税金
重加算税:課税対象の財産を意図的に隠していた場合に課される税金
延滞税:相続税の納付期限(被相続人の死亡を知った日から10ヵ月以内)までに納税されなかった場合に課される税金

追徴課税の一覧

税名 内容 税率
無申告加算税 申告期限までに申告せず、自主的に期限後申告した場合 5%
税務調査により期限後申告した場合 ・納税額のうち50万円までの部分 15%
・納税額のうち50万円を超える部分 20%
過少申告加算税 自主的に修正申告した場合
税務署に指摘されて修正申告した場合 10%
税務署に指摘されて修正申告した場合で追徴税額が「期限内申告税額」または「50万円」のいずれか多い金額を超える部分 15%
重加算税 財産を意図的に隠す、または証拠書類を隠蔽した上で申告した場合 35%
財産を意図的に隠す、または証拠書類を隠蔽した上で申告しなかった場合 40%
延滞税 納付期限の翌日から2ヵ月以内に納付した場合 年7.3%もしくは
特例基準割合+1%の低い方(※)
納付期限の翌日から2ヵ月を超えた場合 年14.6もしくは
特例基準割合+7.3%の低い方(※)

※特例基準割合とは、銀行の新規の短期貸出約定平均金利の平均に、さらに年1%を足した数字。2017年の特定基準割合は1.7%。

3.相続税が追徴課税になった例

故意に財産を隠していた場合、発覚すると上記の何かしらの罰則を受けることはほとんど免れないでしょう。それに、税務署も被相続人の財産をしっかり把握しています。簡単にごまかせるものだとは思わないで下さい。

一方、被相続人の財産をしっかり把握出来てなくて、後々税務調査によって、追徴課税になってしまったというケースもあります。故意に行なった脱税に比べると、罰則は軽い(重加算税がかかる場合も)ものの、「知らなかった」では済まない事を覚えておきましょう。

こちらでは、うっかり知らずに相続税に加算し忘れていた財産の例をご紹介します。

(1)趣味で集めていた骨董品など
被相続人が趣味で集めていた骨董品などでも、高額なものは相続税の対象になります。一見価値が分からないものであっても、高額になる可能性が考えられるものは、相続税の申請前に一度鑑定してもらいましょう。

(2)隠し財産
被相続人が亡くなるまで相続人に存在を知られていなかった財産も、税務調査によって判明した場合は、相続税の対象になります。財産を多く持っている方は、晩年、どのような財産があるのかをしっかり伝えておくことも後のトラブルを防ぎます。

(3)子ども・孫の預金通帳
生前に子どもや孫に財産を贈与する方もいるでしょう。年間110万円以内の生前贈与で、節税効果もありますが、贈与したことを形として残していないと、子どもや孫の口座を借りて預貯金をしていたと判断され、相続税の対象になることもあります。

4.相続税での税務調査が行なわれやすいケース

このように、相続税の税務調査は、遺産の行方に不明点があるので、確認を目的として行なわれることがほとんどです。
以下のような場合、相続される財産が正しく申請されていない疑いが出てき、税務調査が行なわれることが考えられます。

(1)被相続人の収入に対し、相続財産が少ない
例えば、被相続人が毎年年収1,000万円あり、多額の退職金ももらっていたはずなのに、数千万円の土地と銀行に数百万円の預金しか相続として申告されなかった場合、「その他のお金はどこに行ったんだ?」と疑いをかけられてしまいます。
家の金庫の中に数千万円が保管されてあっても、それも相続税の対象として申告しなくてはなりませんし、故意に隠されたものであれば、脱税として捜査も進められていってしまいます。このように、過去の収入などから、簡単に財産は調べられてしまうのです。

(2)専業主婦の被相続人の妻が貯金や株などを多額に所有している
専業主婦やパートで本来預貯金が高額にはなりにくい、専業主婦の妻などに多額の預貯金があった場合、「このお金は生前に贈与されたものではないか?」と考えられます。
贈与に関しても、1年間で110万円以上を超えると、申請を行ない、贈与税を納税しなくてはなりません。それらが行なわれていない場合、税金が正しく支払われていないとも判断されてしまいます。
毎年、110万円以下の贈与が行なわれていたという証拠(贈与契約書や送金の記録など)があれば、贈与税もかからず、被相続人の財産は妻に贈与されたと認めてもらえます。

(3)子どもや孫名義の預金が収入と比較して多い
同じく、子供や孫名義の預金であっても、収入と比較して、多額の預貯金があった場合、「子供や孫の口座を使い預貯金をしていた」「生前贈与をしていた」と判断されます。
この場合も、生前贈与を行なっていたという証拠や子どもや孫の預貯金の流入経路が証明できれば問題ありません。

(4)被相続人の預金から用途の分からない出金がある
被相続人が亡くなると、まとまった葬儀費用がかかってくるでしょう。
被相続人の遺産から葬儀費用をまかなう方も多いでしょうが、用途がはっきりしていない、被相続人の出金があると、「このお金は何に使われ、どこに行ったのか?」を確認されることがあります。

被相続人の死亡後に、葬儀費用等で遺産を使った場合、葬儀費用に使ったという用途がしっかり証明できれば、相続税の対象から差し引くことが可能です。
用途の分からない出金は、そのまま遺産扱いとして、課税の対象にもなります。

5.相続税の税務調査はいつ・どのように行なわれるのか

相続税の申告書の提出期限は、被相続人が亡くなってから10ヶ月後です。そして、税務署は事前に被相続人の遺産をある程度把握しています。
提出された申告書と遺産の額に相違があった場合、税務調査が行なわれています。

(1)税務調査は申告から2年以内に行われるのが一般的
一般的には、税務調査は申告が行われた、あるいは申告期限が到来した年の翌年や翌々年の夏~秋に行われることが多いです。
「1年間税務調査が無かったから大丈夫」という訳ではないので、ご注意下さい。

(2)事前に税務調査の連絡が入る
税務調査は突然、自宅や会社などに行なわれるものではありません。
事前に申告を行った人物(通常担当の税理士)に連絡が入り、そこから相続人に伝えられます。

(3)税務調査は原則、被相続人の生前の自宅で行なわれる
税務調査は、通常相続人全員を集め、生前被相続人が住んでいた場所で行われます。
相続税の対象となる財産が残っている可能性が十分に考えられるからです。持ち家が取り壊されていたりしない限り、このことは変わりません。

(4)税務員は2人組で訪れる
税務員は、通常午前10時頃から2人組で訪れます。
税務調査はおおよそ昼食をはさみ16時には終了します。税務調査は一般的に2日間の日程で行われます。

(5)税務調査でチェックされる箇所
相続税の税務調査で税務員は以下の点を質問し、調査します。

(6)相続人への質問
相続人の現在の職業や収入が質問されます。
また、代表の相続人の筆跡も保管されます。相続人の収入と預貯金に大きな差があれば、その経路も質問されることがあります。

(7)被相続人の質問
被相続人の生前の職業や趣味、病歴、性格、亡くなる前の様子まで細かく質問されます。

(8)税務調査員が目を付けるポイント
相続人への質問の最中に、もう一人の税務調査員が、家の中を捜査します。
目を付けるポイントとしては、「金融機関の名前が入った品などがないか?」「申告漏れの財産は無いか?」通帳や印鑑などはもちろん、隠し財産が無いか、棚や引き出し、仏壇の中まで調べられます。

また、年賀状、日記帳、香典帳なども被相続人の交友関係を調べるために調べられます。

(9)その他質問内容
その他、相続に関していくつも質問がされるので、明確に答えられるようにしておく必要があります。
例として、「入院期間や医療費の金額」「被相続人のお金を管理していた人物」「相続人の預金・出金履歴」「遺言書の有無」「生前贈与の有無」などです。

6.まとめ

以上、税務調査の概要についてご説明しました。冒頭に記載した通り、税務調査それ自体を恐れる必要はありません。
しかし、調査が行われないに越したことはありませんし、相続からしばらく時間が経っていれば、悪意がなくとも記憶が曖昧になって十分に回答できないことも十分あり得ます。

ですので、これから納税される方はできる限り調査が入るリスクを低減できるよう、申告期限までに余裕をもって専門家に相談されることをお勧めします。

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