将来認知症になったときのために今からできる備えとは?
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今は特に病気もなく元気に生活できているかもしれませんが、今後いつ認知症などの病気になってしまうか分かりません。認知症にかかっている人は軽いものも含めると約500万人もいると言われており、一生のうちに認知症になる確率は50%だと考えられています。
しっかりと判断できる今のうちに準備しておける対策をご紹介します。
1.認知症になったら
例えばご自身の親が認知症になってしまったら、銀行で代わりにお金を引き出すこともできません。預金を引き出すには通帳の名義人の意思が必要です。名義人が委任状を作成し、お金の引き出しを委任すれば代理人でも引き出すことができます。
しかし、認知症の場合は、本人が意思表示をすることも難しいため、金融機関は預金の引出しを許可しない場合があります。
また、金融機関だけでなく、保険関係の手続き(解約や更新など)や病院の転院手続きなども本人が認知症の場合、意思確認が難しいため、家族ではどうにも手続きを進められないことがほとんどです。そのような場合は、裁判所に「成年後見人」を付けるための申し立てを行いましょう。
成年後見人とは、判断能力がないと診断された場合に、財産を適切に管理する人のことをいいます。
家庭裁判所に申立を行うと、裁判所が選任した後見人が就きます。後見人には資格等も必要ないため、親族も後見人になることができます。しかし、後見人として適切な人物であるか、裁判所が判断しますので、場合によっては認められず、選任した人物が後見人として就任することになります。そのような場合、専門知識を持っている弁護士や司法書士、社会福祉士が選ばれることになります。
成年後見人が選任されると、預貯金の出し入れ等は後見人がすべて管理します。多額の引き出しや土地の売買などは、後見人1人の判断で決めることができないため、後見人から家庭裁判所へ申し立てを行い、裁判所の許可を取ります。
認知症になってしまうと、本人の判断能力があったころに、「こうしてほしい」と家族に希望をしていても、成年後見人や裁判所が認めない限り、希望通り手続きを進めることが難しくなるでしょう。そのような状況を防ぐためにも、家族信託を利用するのが良いでしょう。
2.家族信託とは
本人が認知症などで判断能力がなくなる前に、預貯金や不動産などの財産管理を家族に承継し、財産管理を家族に任せる契約のことを「家族信託」といいます。
家族信託を行うには、
(1)財産の所有者でそれを預ける「委託者」=本人
(2)財産の管理・運用・処分を行う「受託者」
(3)財産の処分や運用によって利益を得る権利を有する「受益者」
の3人が必要となります。
「(1)委託者」と「(2)受託者」が「家族信託契約」を結びます。なお、家族信託契約書はご自身で作成することも可能ですが、弁護士などの専門家に依頼するのが良いでしょう。「家族信託契約書」の内容に従って「(2)受託者」が財産を管理・運用・処分し、「(3)受益者」に財産の引渡しを行います。
本人の希望をあらかじめ「家族信託契約」に記載しておけば、認知症になってしまっても後見人等を選任する必要がなく、本人の希望通りに財産を管理・相続させることができます。この制度は、平成19年に見直され少しずつ浸透してきた制度です。馴染みがない制度ですが、契約の内容を充分に検討すれば遺言書や成年後見の制度よりも使いやすいという考えもあります。ご自身で判断することができるうちに、「家族信託契約」を検討されてみてはいかがでしょうか。
なお、他にも任意後見契約等の方法で準備することも考えられます。任意後見については別に特集した記事がありますので、そちらをご参照ください。
3.相続税シミュレーション
また、相続対策を考えるにあたって必要な準備の一つとして、「相続税シミュレーション」があげられます。これは、今から相続が発生する「推定相続人」の方や、すでに相続が始まっている「相続人」の方、自分の財産を引き継ぐときにどれくらいの税金がかかるのかを知りたい方など様々な方に利用していただきたいシミュレーションです。
相続税を計算するには、
①相続や遺贈による贈与によって財産を取得した人ごとに課税価格の計算
②課税遺産総額の計算(課税遺産総額は①で計算した各人の課税価格を合計し、そこから基礎控除額を差し引きます)
③相続税の総額を計算
④各人の納付すべき相続税額の計算
というように大きく4段階の計算が必要です。これらの計算は専門知識がないと難しく、ゼロからスタートするのはかなり時間がかかります。そのようなときに、「相続税シミュレーション」を使って、相続税の計算をしてみると良いでしょう。
税理士事務所のホームページや金融機関、不動産会社など様々な企業や団体が無料で公開しています。たくさんあってどれを選べば良いのか分からないと思いますが、まずは国税庁のホームページに掲載されている「申告要否の簡易判定シート」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzok-kanihanteih27.pdfで相続税を計算してみましょう。国税庁が掲載しているものなので安心して使用することができますし、入力項目も少ないので簡単に短時間で利用することができます。まずはこのようなシミュレーションで計算し、詳細については税理士などの専門家に相談しましょう。
4.まとめ
認知症になる前にできる相続の対策はたくさんあります。相続が発生すると、仲が良かった家族が遺産分割で揉めてトラブルになるケースもあります。病気で判断能力がなくなってしまったり、急に親族が亡くなってしまったときにトラブルなく相続手続きが進められるように、事前に準備をしておくことが大切です。
何から始めたらいいのか分からないときは、弁護士や税理士などの専門家に相談し、的確なアドバイスを受けると良いでしょう。