特定の相続人に遺産を相続させる「遺留分」対策のポイント

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遺留分対策とは何か、どのような方法があるかご存知ですか?
今回は、遺留分対策について詳しくお話していきます。

1.遺留分対策とは

「遺留分対策」「生前贈与」「遺留分の生前放棄」これらの言葉を聞いたことがあるでしょうか?

相続人の中で、ある特定の人にだけ遺産、財産を相続させたい、遺言書で誰か1人にだけ財産をあつめたいが、他の相続人に遺留分が発生することは避けたい、今後財産が増えそうなため、今のうちに特定の相続人以外の相続人に相続放棄をさせておきたい、このように考えている方は、遺留分の対策をしておく必要があります。

遺留分というのは、残された相続人に認められている、生活を保障するための最低限の取得分です。本来、相続財産をどう分配するかの決定権は財産の所有者である被相続人にあるため、被相続人は遺言によって「一部または全部の相続人に遺産の相続を認めない」ことができます。

しかしながら、被相続人の一存で相続人が一切相続できないこととなってしまうと、その相続人の生活が立ち行かなくなることがありえますし、他の共同相続人や遺産取得者との関係で、あまりにも不公平な結果が生じてしまいます。

そこで、民法は遺留分という制度によって、前記のような遺言書があっても相続人に一定の範囲で遺産の取得を認めています。

このように、遺留分は遺産取得者、共同相続人間の不公平を是正し、相続人の生活の安定を図るセーフティネットのような制度となりますので、その対策には相当の準備が必要となってきます。生前のうちに、どのように相続をしたいのかを決め、準備の計画を立てていくことをおすすめします。

そして、具体的な遺留分対策の方法としては、「生前贈与」と「遺留分放棄」の2種類の方法があります。これから、それぞれについて詳しく説明していきます。

2.生前贈与

まずは生前贈与についてお話していきます。
民法上、被相続人が亡くなる10年以上前に行われた生前贈与は遺留分の算定に含めなくて良い、と定められています。要するに、相続発生より10年以上前に生前贈与をして相続時の遺産総額を抑えることで、遺留分対策が可能となるのです。

これは、2019年7月から始まった制度なので、まだあまり世間には浸透していませんが、この方法が最もシンプルな対策方法となります。ただし、以下の二点には気を付けておく必要があります。

⑴ 生前贈与から10年以内に死亡してしまうと対策としての意味がなくなってしまう点

前述の通り、遺留分算定から除外されるのは10年以上前の生前贈与です。言い換えると、10年内の生前贈与は算定の基礎に含まれてしまう恐れがあります。

これは、「特別受益」という制度によるものです。すなわち、前述の通り、遺留分の制度は共同相続人間の不公平を是正したり、相続人の生活を最低限保障することが目的ですが、法定相続分通り相続できない相続人が、相続以外の方法で財産を取得していれば、その分「不公平の是正」や「生活の保障」をする必要がなくなります。

そこで、生前贈与のような形で被相続人の財産を受領している相続人については、それが「遺産の前渡し」と言える限り、贈与を受けた分も遺産とみなすこととされています。

要するに、10年内の贈与は遺産の前渡しとして扱われる可能性があり、そうなると、贈与分も遺留分算定に含まれることとなってしまうのです。
図で説明すると、以下のような形になります。

例:相続人が2人の息子で、2億円の財産をできる限り次男に相続させたい場合
2億円すべてを次男に生前贈与

財産が0になる

相続させる財産がなくなる

10年が経過             10年経過する前に被相続人がなくなる
↓                       ↓
長男が相続する財産が0円になる       長男は遺留分を請求することが可能
(遺留分を請求することが不可能)

 

⑵ 贈与税対策が必要となる点

生前贈与の場合、基本的に相続税ではなく贈与税が発生します。贈与税は、受贈者一人当たり年間110万円を超えた部分に発生してきます。したがってまずは、この110万円の枠内で贈与を行うことが贈与税を抑えるポイントとなります。

次に、「相続時精算課税」の制度を使うことが考えられます。これは、60歳以上の方が、子や孫に贈与を行う場合に認められる制度です。贈与であれば本来、贈与の行われたタイミングで贈与税の納付をしなければなりませんが、この制度を用いれば、贈与財産の内2500万円を超える分についてのみ贈与税を納付すれば足り、2500万円分については、相続発生時に相続税算定の基礎に含める形で処理できます。

これによって、「3000万円+法定相続人の数×600万円」という相続税の基本控除枠を使えます。
生前贈与を行う場合には、こういった税金対策も考えなければなりません。

なお、生前贈与には、財産を減らすことができる他に、誰に何を渡しても良い、というメリットが挙げられます。仲の良い友達にとてもお世話になったので、財産を渡したい、介護に来てもらっていた人に少しだけれど財産をもらって欲しい、という方もいらっしゃると思います。

そんなとき、親族でなくても生前贈与を行うことができます。生前贈与以外だと、遺言書で誰に何を相続するのか決めることができますが、生前贈与の方が手続きを簡単に済ませることができます(相続時精算課税は使えません。)。

3.遺留分放棄

2では、遺留分対策として生前贈与についてお話しましたが、3ではもう1つの方法である遺留分放棄についてお話していきます。
特定の相続人のみにすべての財産を相続させたい場合には、被相続人が生きている間に他の相続人を説得し、遺留分を放棄してもらいます。
ただし、遺留分を放棄してもらうためには、家庭裁判所から許可をもらわなければなりません。家庭裁判所の判断基準は以下に記載の通りです。

1、遺留分の放棄が本人の自由意思に基づくものであること
2、遺留分放棄に合理的な理由と必要性があること
3、遺留分放棄に対して見返りがあること

以上3つが判断基準となります。これらの判断基準を満たし、家庭裁判所から許可が下りることで、遺留分を放棄させることが可能となります。
以下、遺留分放棄の例となります。

例:2人兄弟で、2億円の財産すべてを弟に相続させたい場合
長男に早い段階で5000万円などまとまった額を生前贈与で渡しておく

長男に生前贈与の手続きを行ってもらう

家庭裁判所から許可がおりる

遺留分放棄

遺留分放棄を行った場合、放棄をした相続人は遺留分減殺請求を行う権利を失うこととなりますが、遺留分減殺請求権を失ったからといって、他の相続人の遺留分が増えるというわけではありません。遺留分は一定の割合から変動することはないのです。
ちなみに、「遺留分放棄」に似た言葉で「相続放棄」がありますが、これらには大きな違いが存在しています。

「遺留分放棄」というのは、「遺留分」のみが放棄する対象となりますので、相続権は失っていませんが、「相続放棄」というのは、「相続」自体を放棄することを意味しますので、相続権、遺留分など相続に関する全てを失うこととなり、受け取るものがゼロとなってしまうのです。また、「遺留分放棄」は相続が発生する前に行いますが、「相続放棄」というのは相続が発生したあとに行うものとなり、この点でも2つには違いがあります。

4.まとめ

生前贈与を行う際に、「相続時精算課税制度」を利用するのか、それとも非課税枠を使って毎年少しずつ財産を減らしていくのか、他にも贈与税の申告や相続にかかる税金の話など、税金に関する話がたくさんでてきます。生前贈与ではなく、遺留分放棄をさせるにしても、ただ単に放棄をしてもらう訳にはいかず、ここでも税金の話がでてくることになります。
自分1人で手続等を行うことは難しい場面も多くでてくると思いますので、是非一度弁護士や税理士に相談をしてみてください。

 

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