遺言執行者って選任しておいた方が良いの?
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動画でわかりやすく解説!
- 相続や遺言書に関する言葉で「遺言執行」という言葉を聞いたことがありますか?
- 今回は、遺言執行者とは何なのか、また遺言執行者選任の必要性などについてもご説明したいと思います。
1.遺言執行とは?
遺言者が亡くなったとき、遺言書の内容を実現させるため、遺言書の内容に沿って遺産相続手続きが行われます。これを遺言執行と言います。また、遺言執行に必要な手続きをまとめて行う人のことを、遺言執行者と言います。
遺産相続なら、相続人たちで力を合わせて手続きを行えば出来るので、わざわざ遺言執行者は必要ないのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
たしかに、相続人同士の協力があれば、相続手続きを完了させることはできますが、中には相続人同士で揉めてしまう相続があったり、相続人同士が遠方に住んでいたりで、なかなか手続きが円滑に進められない場合があります。そういったときに遺言執行者がいれば、揃える書類なども少なく、最低限の手間と時間で遺産相続を進めることが可能になるのです。
次に、遺言執行者とは、どのような人が遺言執行者に選任するのに適しているのでしょうか?
遺言執行者になるには、特別な資格が必要なわけではなく、未成年者や破産者など例外を除けば誰でもなることができます。
つまり、相続人でもなることが可能です。しかし、相続人の1人が遺言執行者になってしまうと、財産の分配(2. 遺言執行者の役割 で後述します)を行ったりするため他の相続人から、「財産の独占をしているのではないか」などあらぬ疑いを掛けられてしまい、相続人同士のトラブルになりかねません。
そういったトラブルを防ぐため、また手続きも専門的で複雑なこともあるので、遺言執行者は相続手続きに詳しい専門家を選任するのがおすすめです。
次に、遺言執行者の必要性がより分かるように、具体的な遺言執行者の役割についてご説明したいと思います。
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2.遺言執行者の役割
遺言執行者の役割(=権限)は、大きく以下の6つに分けられます。
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①財産目録の作成
まず、相続が発生したら、財産を証明する書類(登記簿や権利書等)を揃えて財産目録を作成し、相続人に提示します。
②相続人の相続割合の指定・分配
実行する遺言の内容に沿って、各相続人の相続割合と遺産分配の指定を行い、実際に遺産の分配を行います。このとき、登記申請や、金銭取り立て(不動産が相続遺産である場合の賃料の取り立て)も遺言執行者が行うことができます。
③相続財産の不法占有者に対して明渡・移転の請求をする
相続遺産の土地や建物等を不法に占有している者がいる場合は、明渡や移転の請求をすることが出来ます。
④相続人以外への遺産の引渡
遺言書に、相続人以外へ遺産を遺贈したいと記載されている場合は、その通りに遺産の引渡を行います。
⑤戸籍の届出
遺言者が遺言書によって子どもを認知※した場合は、戸籍の届出を行います。
※認知:結婚していない男女間に生まれた子供は、父親が認めることにより父と子の関係が法的に認められます。この行為を認知と言い、遺言で認知をし、戸籍の届出を行うと、相続人が増えるということになります。
⑥相続人の廃除・廃除の取消
遺言者は、相続人に遺産を相続させたくない場合、生前に家庭裁判所で手続きを取るか、遺言書に記載しておくことで相続人を廃除することが可能です。しかし、遺言書に書いただけでは実際には廃除することはできないため、代わって遺言執行者が家庭裁判所で手続きを行い、相続人の廃除を行うことが可能となります。
反対に、一度生前に相続人の廃除を行ってしまって、撤回したい場合は遺言書で廃除の取消を行うことが可能で、遺言執行者によって手続きが取られます。
これらが、遺言執行者が行う役割になります。このように見てみると、遺言書を書いておくことで死後出来ることもいろいろと存在しているのだな、ということが分かりますね。
次は、遺言執行者は実際に選任しておくべきかどうかについてお話しておきたいと思います。
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3.遺言執行者を選任すべき理由
遺言執行者は、遺言書を書くからといって、必ずしも選任しなければいけないわけではありません。しかし、選任しておくべきメリットは非常に大きいので、選任しておくことをおすすめします。遺言執行者を選任しておくべき理由は、「相続手続きがスムーズに進めることができ、遺された家族に面倒な思いをさせないで済むから」というのが大きいでしょう。
具体的に、遺言執行者を選任している場合と、していない場合でどれくらい手続きの内容が違ってくるのでしょうか?
以下、銀行手続きの一例を用いて遺言書で遺言執行者を選任している場合と、していない場合の必要書類を比較した表になります。
相続手続き(銀行手続き)に必要な書類 (遺言書通りに相続する場合) |
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遺言書で遺言執行者を選任している場合 | 遺言執行者を選任していない場合 |
・遺言者の戸籍謄本 ・遺言執行者の印鑑証明書 ・遺言執行者の実印 ・遺言書(原本) ・検認済証明書(自筆証書遺言の場合) ・遺言者の通帳・証書・キャッシュカード等 その他、各銀行での必要書類がある場合あり |
・遺言者の戸籍謄本 ・遺産を相続する人全員の印鑑登録証明書 ・遺産を相続する人全員の戸籍抄本(または謄本) ・手続を行う受遺者の実印 ・遺言書原本または公正証書遺言(正本か謄本) ・遺言者の通帳・証書キャッシュカード等 その他、各銀行での必要書類がある場合あり |
こちらの表を見て頂くと、遺言執行者を遺言書で選任している場合は、銀行手続きの際に、わざわざ相続人に関する書類を集める必要がないことが分かります。一方、遺言執行者を選任していない場合は、遺産を相続する人全員の印鑑登録証明書や戸籍が必要となります。
この場合、何が問題かというと、印鑑証明を取りに行く、という手間も生じますし、万が一、遺言書に書いてある遺産分割方法に納得がいっていない人がいる場合、印鑑証明書を取得してもらえず、手続きが進められないという可能性があります。その場合は、遺産分割協議を行い、遺言書通りの遺産分割方法にならず、遺言者の意思に沿わない結果となることが考えられます。
その点において遺言執行者を選任しておくと、遺言書の内容通りに相続をスムーズに進められるということが言えますね。
4.まとめ
遺言執行者は、遺言者の意思通りに相続を行うことができるほか、遺されたご家族(遺産を相続する人たち)の手続きの手間を減らすという役割もあります。
ご家族を思いやり、確実な遺言の実現のために遺言書で遺言執行人を選任しておくと良いでしょう。
また、その際は相続に詳しい専門家に相談してみることをおすすめします。