遺産分割するまでは、亡くなった人の財産の管理ってどうしたらいいの?
- HOME
- お悩み別コラム
- 相続手続き全般・相続登記・相続放棄
- 遺産分割するまでは、亡くなった人の財産の管理ってどうしたらいいの?
動画でわかりやすく解説!
遺産分割をするまでにも、亡くなった人の財産は管理しなければなりません。誰が、どのような管理方法で管理するのが適当でしょうか。民法の規定に沿ってみてみましょう。
民法898条は、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と規定しています。これを遺産の共有と呼びますが、たとえば、相続財産中の不動産は、共同相続人間でその所有権は共有され、各相続人は共有持分を持つことになります。
1 相続人が管理する場合
(例1)Aさんの父が急に亡くなりました。相続人はAさんと母です。Aさんたちは父の全ての遺産を把握できておらず、相続を承認するか放棄するかはまだ決めていません。
最近、父が所有していた家が老朽化して、あちこちから雨漏りしていることが分かりました。
Aさんはこれ以上家が傷まないよう修理をしたいと考えていますが、母はお金がもったいないと修理を嫌がっています。相続するか決めていないAさんは家の修理をできるでしょうか。また、母が反対していても修理を進めて問題ないでしょうか。
この点に関して、上記の通り相続方法が決まっていない状況では、相続人であるAさんと母が家を共有していることになります。
そして、民法では、「相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。」と規定されています。
つまり、今回の場合であれば、通常の人が自宅を管理するのと同程度、の管理レベルで、Aさんと母が家を管理しなければならないということになります。
また、「管理」に当たるのは、以下のような保存、利用・改良行為です。
(1) 保存行為(財産の現状を維持する行為)
- ・修繕・補修
- ・腐敗しやすい物や保存に著しい費用を要する物の廃棄や換価
- ・仮装登記の抹消請求
- ・相続土地の保存登記
- ・不法占有者に対する引渡請求
(2) 利用・改良行為
- ・動産や不動産の利用
- ・建物の賃貸借(ただし、賃貸借の期間は3年以内に限ります。)
- ・利息付きの金銭の貸与
- ・抵当権の抹消
今回の事例では、Aさんが行いたい雨漏りの修繕は、保存行為に当たります。したがって、相続方法の決定が未了であっても修繕を行うことに問題はありません。
では、同じ相続人である母の賛同を得ずに、Aさん単独で修繕し得るでしょうか。
共同相続人が複数いる場合、全員で共同して管理するのが原則です。しかし、保存行為については各相続人が単独で行うことができます。ですから、今回の事例では、Aさんは雨漏りの修繕を単独で行うことができます。
ちなみに、利用・改良行為は、共同相続人の過半数(相続持分の過半数)で決します。例えばAさんが家を修理した後、他人に貸したいと考えた場合、これは利用・改良行為に当たるので、母の賛同が必要となります。
なお、遺産の管理費用は、相続財産の中から支払われますので、Aさんは雨漏りの修繕費を、父の遺産の中から支出することができます。
2 相続財産管理人の選任
相続人が遠方に居住している場合や、共同相続人間の対立が激しい場合など、相続財産の適正な管理が難しいときには、相続人らは家庭裁判所に対し、相続財産の保存に必要な処分として財産管理人の選任を申し立てることができます。基本的には弁護士が選任されています。
なお、似た制度として、相続人不明、不在の場合に財産を処分する相続財産管理人という制度がありますが、今回ご説明するのは、あくまで相続財産の保全に必要な処分として、管理のみを行う財産管理人になります。
そして、上記のように、相続方法決定までの間の遺産管理を任された財産管理人は、善良なる管理者の注意をもって相続財産を管理する義務があります。
つまり、相続人本人よりも高いレベルの管理が要求されていますので、注意が必要です。また、財産管理人は、保存行為の他、利用・改良行為についても単独で行うことが可能です。
なお、財産管理人が相続財産を管理するのは、共同相続人が相続を承認するか放棄するか選択し、相続人が確定するまでの間に限ります。相続人が確定すると、確定した相続人自身が相続財産を管理することになります。
3まとめ
今回は、遺産分割前の相続財産の管理についてご説明してきました。管理の範囲を超える行為をしてしまうと、処分行為に当たり、単純承認とみなされる場合があるので、気を付けましょう。
何か行動を起こす前に、弁護士に相談し、問題がないかどうか確認することをお勧めします。
また、相続人が地元を離れて遠方に居住している場合や、複数の相続人がいて争いとなっている場合には、管理を行うのが難しいでしょう。このような時には財産管理人の選任を申し立てるのが得策です。